大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和34年(く)18号 決定

少年 K(昭一五・三・一七生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は記録中の抗告人提出の抗告申立書に記載のとおりであるからこれを引用する。

その要旨は、少年(K)は家庭に帰し法定代理人(父、母)等の監督の下にその更生を図るのが相当であるから、原決定の特別少年院送致の処分が著しく不当であるというに帰するのであるが、しかし本件記録(少年保護事件記録及び少年調査記録)を調査し検討してみると、少年は以前昭和三十二年中に窃盗、詐欺等の非行を犯し翌三十三年三月十五日の審判でそれについて不処分の決定を受けたが、その後同三十三年九月中に傷害(二件)、窃盗、翌三十四年二月中に窃盗未遂、暴行の非行を重ね松山家庭裁判所で約六箇月の試験観察を経て同三十四年六月十二日保護観察に付する旨の決定を受けその保護観察中であるにもかかわらず更に本件の窃盗、恐喝、暴行(二件)の非行を犯したものであつて、かような少年の非行歴と勤労意欲が無い上に浪費癖や遊興癖が強く現在も不良交友を継続している等の少年の性格上の不健全性、更には家庭等における保護監督能力も信頼するに足りる程度のものでない(大阪在住の少年の叔父に指導監督を依頼できるとの点は少年がすでに以前同人の世話で大阪で就職し生活していたことがある事実に鑑み左程期待を持てない)等の点に鑑みると、最早や少年を家庭等の比較的自由な環境に帰してその改過遷善を期待することは極めて困難なことであつて、むしろこの際少年をある期間国家の施設に収容して強力適正な矯正教育を施し集団訓練の中で勤労意欲を養うとともに従来の悪友との関係を絶ち真面目な生活態度を身につけさすことが必要にして肝要な措置であると考えられる。従つて原決定の特別少年院送致の処分は相当であつてそれに著しい不当があるとはいえないし、その他抗告人主張の諸事情を詳細に検討しても原決定を取消す必要は認められない。論旨は理由がない。

その他記録を調査しても法令違反、事実の誤認、処分の不当等の点について原決定を取消すべき事由は認められないから少年法第三十三条第一項、少年審判規則第五十条により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 加藤謙二 裁判官 松永恒雄 裁判官 谷本益繁)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例